街のバール(喫茶店)で「時間をかけずに淹れるコーヒー」、エスプレッソ(イタリア語で早い)が提供され始めたのが1900年代。エスプレッソを淹れるマシンは蒸気を使い圧力をかけ、一気に抽出をすることができましたが、蒸気が直接コーヒーに触れることで、苦く雑味があるコーヒーしか作ることができず、評判は決して良いものではありませんでした。
また当時、バールに設置しているコーヒーマシンの多くは、店のオーナーが自ら作り上げた手作りマシンでした。店独自のオリジナルマシンは、圧力の微妙な調整など操作が複雑で、マシンを扱うには熟練した技術が必要でした。そのことから、エスプレッソを淹れるバールのマシン職人=「バリスタ」という職業が生まれました。それから40年近く、多くのバリスタがこの問題を解決するため、温度と圧力を調整する方法を模索してきました。
コーヒーの歴史を大きく変えたのは、ミラノのとあるバールオーナーの一つの発明から始まりました。1938年に申請した特許はコーヒー文化そのものを大きく変え、現在飲まれているエスプレッソはここから生まれたのです。そのバールオーナーの名はAchille Gaggiaといい、後のGaggiaブランドの創設者になります。
Gaggia氏の発明は蒸気を使わずに、圧力をかけた熱湯をコントロールすることでした。
今までの黒くて苦いだけの飲み物から、全く異なるコーヒーが誕生しました。Gaggia氏の発明したマシンで淹れたコーヒーは見た目から違い、なんと、クリーム状の泡がコーヒーの表面に浮かんでいたのです。
最初は誰かがコーヒーに生クリームを加えたのではと疑うほどの驚きでした。良質なエスプレッソの象徴、「クレマ」は自然にできるクリームコーヒーと呼ばれる様になりました。
イタリア人はエスプレッソを飲む前からクレマを見て評価を始めます。評価のポイントは下記の3項目になります。
① 色(濃すぎても、薄すぎてもだめ。理想はヘーゼルナッツ色)
② キメ細かさ
③ 厚み(多い程良い)
当時のマシンは外観が全てであり、バールに入るとカウンターの真後ろに店の看板として飾られていました。これらのマシンは博物館レベルの一品ものです。Gaggiaのマシンは機能で勝負しました。特徴は圧力をコントロールするレバーであり、最初のモデルは1レバー。エスプレッソ人気が広がり、多くのオーダーに対応するため、3レバー、4レバー、最大6レバーモデルも発売されました。
クレマの浮かんだコーヒーの人気は瞬く間に世界へ広がり、僅か2~3年で欧米の主要都市の人気店に次々とGaggiaのマシンが設置されました。それまでナイトクラブでは提供されていなかったコーヒーは定番メニューとなり、「バリスタ」は若者の間でなりたい職業ランキングのトップテンに入るほどでした。アメリカでは一時的にバリスタが足りなくなり、Gaggiaにバリスタトレーニングの要請が殺到しました。
いち早くGaggiaを導入した店はミラノのGalleria Vittorio Emanuele通りで店を構えていた「Motta」と「Biffi」、一流ナイトクラブ「Astoria Club Milano」。現在もロンドンの人気スポットであるソーホーに「Moka Bar」と「Bar Italia」、「Sirocci Bar」、「El Cubano Coffee Bar」、ブランドをそのまま使用したGaggia House、Coffee HouseからCaffe Barに変った時代でした。
「家庭でもバールの味を」は消費者の長年の憧れであり、夢でした。その夢をかなえたのがGaggiaの「Gilda54」モデルです。業務用の圧力レバーをそのまま使用して、「ウサギの耳」の愛称で呼ばれていました。
このコンパクトで独創的なルックスと、クレマ入りコーヒーが出来ることで、一躍世界のベストセラーとなりました。
二度目の転機は23年後のBaby Gaggiaの誕生です。Gilda登場からイタリアだけでも数十社が家庭用モデルに参入し競い合っていました。Gaggiaは他社と差別化をするために、ミラノに居住していた日本人工業デザイナーMakio Hasuikeにデザインを依頼。「Baby Gaggia」はハイブリッドモデルで、家庭のみならず、小規模オフィス、ブティックやレストランで愛用されました。「Baby Gaggia」の登場で世界中でGaggiaブームが再燃しました。
Gilda 1952 Original
Gilda
Gilda 54 「ウサギ耳」
Duo Gaggia 1976
Original Baby Gaggia 1977
Baby Gaggia 2001
Achille Gaggia 2006
Carezza 2013
Gaggiaはバールに設置しているマシンを誰よりも早く小型化することに成功し、バールの味を家庭でも楽しめるようにしました。同じ様に、業務用で普及していた全自動式エスプレッソマシンをSergio Zappella氏が小型化に成功したのは30数年前。セミオートマシンではどうしても手間と多少のテクニックが必要ですが、全自動マシンは豆の挽き、コーヒーの圧力抽出、粉カスの圧縮と排出がボタン操作一つで可能となりました。尚、味についても、豆量、豆の挽き粗さ、お湯量、圧力の調整で自由に好みの設定ができ、上級モデルはさらにミルクフォーミングも失敗することなく自動で行うことができます。
デザインや機能も長年の研究開発により向上し、ファションの街ミラノに相応しい現在の「Gaggia design」に進化しました。
Syncrony Logic
Syncrony Digital
Syncrony Compact
Unica
Platinum series